阿部康雄
アベヤスオ
1967年3月27日生まれ、
43歳、B型。S級1班に在
籍する競輪選手。
地元記念は決勝2着が最
高。悲願の初制覇なるか。
競輪選手になるには、何10倍という競争倍率の競輪学校に入り、訓練を受けなければならない。平成2年当時は年齢制限があり、社会人を経由していた阿部康雄にとって68期生の試験が最後のチャンスだった。

前橋で行われた一次試験(1000m独走)。僕も応援にいった。1周400mのバンクを2周半もがく。あと1周になるころには、誰もがバテバテになる。最初にぶっ飛ばし、その勢いをいかにして持たすかにかかっている。

失敗が許されない彼もヘトヘトになってゴール。一次試験を通ったことが分かると、彼は号泣しながら、応援に来てくれた人たちに感謝の握手を何度も何度も繰り返していた。

感動したといったら、逆に薄っぺらになる場に立ち会えた。

競輪界ではG1と呼ばれる大きな大会が年に6回あり、平成3年に24歳でデビューした彼は、29歳で初めてそのうちのひとつ高松宮記念杯に出場を果たす。

そして40歳をとうに過ぎた昨年の5月に、高松宮記念杯の決勝に勝ち上がった。G1の決勝進出はこれが3回目だった。

かつて「強くなっている選手は必ず、きついこと、苦しいことをやっている。それは間違いない」と言っていた。「若いころの方が力はあったけど、休むことの大切さを知らなかった」とも。

今、刈り上げた頭には白いものが交じる。練習や実戦の疲れは以前にも増して、体に残るようになった。

「年だから」も連発するけど、成績はいっこうに衰えない。

「入れ込まずに、1戦1戦を戦っている」。

慌てず、騒がず、いい流れが来るのを待つ。